題名のない文章たち

日記のような、そうでないような、そんなただの文章のあつまり

見つめられる

その人は私の目をじっと見つめた。
私はその視線が痛くて、自分を守っている何かを貫こうとするその視線を避けたくて、目を逸らそうとした。

出来なかった。ちゃんとこちらを見なさい。ただ一言言われただけなのに、私の体は固まり目と目で見つめ合うことになった。

その目は私の体の中を、心の中を、隅々まで見ているようで、その視線がただただ痛くて、でも目を逸らすことは決してできなかったので、私はどうすることもできずそのままじっと耐えていた。

私を見ていたその目は、私を強く強く守っていた何かを貫いた。それは突然やってきた。もう目を見ることはできなくて、息をするのも苦しくて、そして何より涙が溢れ出てきていた。何故泣いているのか私には分からない。

その人は私の目を見つめるのはやめて、頭を撫でていた。でもやっぱりその人の目は、私を真っ直ぐに見つめていた。心がざわざわした。漣が立っているようだった。大きな波ではない。しかし確かな波だった。数日たった今でもその波は収まっていない。