題名のない文章たち

日記のような、そうでないような、そんなただの文章のあつまり

夜の山

冬の夜寒い山の上に行ったことがあるだろうか。

体の芯から冷えるように寒く、音はなく怖いくらいにしんとしている。月がない日は光はない。自分の手足くらいしか見えない。

真っ暗な闇の中に自分ひとりだけ取り残されたような気持ちになる。視野が酷く狭くなってしまっているような気がする。

でも

ふと見上げると、何千何万もの星ぼしの光で溢れているのだ。星座表には載っていないような星もぼんやりと見える。

何も無い暗闇の中で星ぼしが光り輝いているのを見ると、なぜだかほっとするのだ。

そういう感覚を経験できただけで、私の中に何かが残った気がする。それだけでいい気がする。

 

何かに悩んで動けなくなって、自分の手足しか見えなくなるくらい視野が狭くなった時も多分同じ。

見上げれば必ず星が輝いている。遠くを見ることが出来れば違う景色が見える。

それを知っているだけで私は多分大丈夫。