題名のない文章たち

日記のような、そうでないような、そんなただの文章のあつまり

寂しい目

動物は好きだ。
猫が好きだ。
犬も好きだ。

幼い頃は艶やかな栗色の毛をしたダックスフントが家にいた。頭は白髪になった、おばあちゃんだった。私のひいおばあちゃんの後ろをいつもちょこちょこと歩いていた。

目はいつも寂しそうだった。

一昨年、弟がどうしてもと言い出して捨て犬を引き取った。
まだまだ子供のそれでもやっぱり艶やかな黒い毛をした雑種の女の子。

誰かが帰ってくると、玄関に飛び出して一番に出迎える。1日に何回でも外に行きたがる散歩好き。普段は甘えたりはあまりしないけれど、留守番するときは窓の前でじっと誰かの帰りを待っている。お座りも待てもちゃんとできる。

でも、私は彼女の目を覗き込めない。
彼女の目もいつも寂しそうだから。

なぜなのかは分からない。
彼女には、自分が人間でないことが分かっているからだろうか。
彼女の世界が小さな小さな家の中にしかないことが分かっているからだろうか。
彼女の命が周りの家族よりも短いことを理解しているからなのだろうか。

彼女の目を覗き込むと、私は自分がいつか必ずこの世界から消えてなくなることを突きつけられているように思える。

動物は好きだ。犬ももちろん好きだ。
好きだけれど嫌いなのだとも思う。