題名のない文章たち

日記のような、そうでないような、そんなただの文章のあつまり

開け忘れた鍵

今週のお題「ゾクッとする話」

 

中学生のとき、中学生には当たり前のことかもしれないが学校には出る。という噂がたたあった。特に音楽室。

 

私は吹奏楽部だったし、吹奏楽部は学校内で一番練習の多い部活だったから毎朝誰もいない頃に音楽室に入り、放課後は暗くなる最終下校時刻ぎりぎりまで音楽室にいた。

しかし、特に何かを感じたことはなかったし私自身練習で忙しくそんな噂など普段は忘れていた。

 

ところが

 

あるとき、朝練のために音楽室に行くとまだそこには私しかいないという日があった。音楽室には扉が部屋の前と後ろの二か所あり、外から鍵を開けることができるのは前の扉だけ。後ろの扉は最初に音楽室に入った人が中から鍵を開けておくという決まりになっていた。

 

音楽室の鍵を借りに職員室に行き、戻ると同期の姿が一人。

その同期と私が仲が良かったこともあり、音楽室に入るや否や私も同期も後ろの扉の鍵を開けることをすっかり忘れてしまっていた。

 

しばらくすると、ガチャガチャと後ろの扉を開けようとする音。

 

普段は後ろの扉が開いていないと分かれば皆前の扉からすぐに入ってくる。しかし、今日は入ってこない。

私も同期も、入れなくてへそでも曲げたのだろうか?と思い鍵をすぐ開け、誰だろう?一言詫びようかと扉を開け廊下を見まわした。

 

廊下には誰もいない。

音楽室の中には私と同期のみ。

 

何だったのだろうと廊下を見まわしているとまた一人同期がやってきた。後ろの扉を開けようとしたかと聞くと、今来たばかりなのだからそんなことはしていないという。

 

しかし確かに誰かが扉を開けようとしたのだ。

 

その後、打楽器のメンバーが個人練習をしている間に誰もいないはずの後ろの壁から何者かの視線を感じたやら、音楽室のテレビが勝手に消えるなど不可解なことが何度か続いた。

 

もしかしたら、私が扉を開けたことで中に入れてはいけない何かを招き入れてしまったのかもしれない。

 

その年の吹奏楽コンクールはかなりの好成績だったので座敷童子だったと思うことにしている。